2018.11.42018.11.4-8 【番外編】シャルージャ国際ブックフェア・レポート

2018年10月31日から11月10日までUAE(アラブ首長国連邦)のシャルージャで国際ブックフェアが開催されました。今年のゲスト国は日本ということで、湊かなえさんもシャルージャ書籍協会(SBA)のご招待を受け、行ってまいりました。

11/4(日)
朝の5時45分、関空発で11時間のフライトを終えた湊さんがドバイ国際空港に到着。成田発の便で一足先に到着していた編集Hと落ち合い、車でホテルに向かいました。

チェックインの際少々バタバタがあったものの、何とか無事に部屋に入ると見事なウェルカム・フルーツが置かれていました。この時点でまだ朝7時前。到着日ということで特に予定をいれていなかったのですが、急遽ノール・モスクとセントラル・スーク(市場)のツアーに参加することにしました。ちなみにSBAがゲスト向けに様々なソーシャル・プログラムを用意してくれており、このツアーもその一つ。

出発時間の9時半、ロビーに参加者の方が集まってきました。柴崎友香さん、中村文則さんご夫妻、翻訳家の柴田元幸さんご夫妻、イベントで司会者を務めてくださるアリソン・パウエルさんご夫妻。みなさんとはじめましてご挨拶の後、車で出発。

シャルージャには700以上のモスクがありますが、ノール・モスクは美しい建築で最も有名だそうです。女性は髪と体のラインを隠さなくてはならないので、全員ショールと衣装を着用しました。荘厳で美しいモスク内を見学した後、アラビアン・コーヒーをふるまっていただきました。
シャルージャ国際ブックフェア

セントラル・スークの市場内は圧倒的に布のお店が多く、湊さんも早速透かし模様の入った黒いスカーフをお買い上げになりました。値段は10AED(約300円)!このスカーフは旅行中大活躍しました。

ホテルに戻り、柴崎さん、柴田さんご夫妻とホテル内のレストランで遅めの昼食。先にシャルージャ入りしていた皆さんのお話をうかがえて、とても参考になりました。

昼食後はタクシーでドバイ・モールへ。世界屈指の巨大なエンタメショッピングモールです。(正直、編集Hは最初に聞いた段階ではシャルージャという地名を知らず、周囲にも「ドバイに行く」と伝えていました)。ここには紀伊國屋書店の日本国外で最大のドバイ支店があるのです。全世界の紀伊國屋書店に行きたいという野望をお持ちの湊さんが、UAE行きが決まった時からぜひ行きたいと仰っていました。店長の平田さんは、湊さんが二年前に台湾でサイン会を開催した時は台湾店にいらしたそうで、再会を喜びあいました。二日早くUAE入りしていた宮下奈都さんと落ち合い、三人で記念写真。
シャルージャ国際ブックフェア

しばらくドバイ・モールでチョコレートやデーツのお菓子などの買い物を楽しみ、「ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル」でトム・クルーズがしがみついていた828mの高層ビル、バージ・カリファにある世界で一番高い場所にあるレストランAt.Mosphere へ。レストランのあるアルマーニ・ホテルの入り口になかなか辿り着けず、道を間違えたのかと引き返したりしてすごく歩いてしまったので、冷たい飲み物が喉にしみわたりました!442mから見える夜景はまるで映画の中にいるようです。音と光にあわせて水がダンスしているようなドバイ・ファウンテンの噴水ショー、バージ・カリファのライトアップショーも観た後、ホテルに戻り、長いUAE初日が終了。
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11/5(月)
本日は学校訪問ということで、湊さん、通訳のKさん、SBAのスタッフと四人で車で出発。Kさんはシリアに七年住んだ経験もあり、アラビア語・英語ともに堪能。UAEの事情にも詳しく、日本のアニメが人気で、アニメファンの女の子に「悪いな」「あばよ」といった日本語で声をかけられたりするという話などを聞きつつ、L女子校に到着。最初に間違えて入ってしまった隣接する(といっても200mは離れていましたが)幼稚園がとっても可愛らしくてなごみました。
シャルージャ国際ブックフェア

ところがいよいよハイスクールのほうに入ることになってハプニングが!男性であるKさんは中に入れてもらえないというのです。(王族の娘さんも通うお嬢様校らしいので、特に厳しいのかもしれません……)とはいえ、いきなりの通訳なしの事態に血の気がひいた編集Hでしたが、そこはトンガでの先生経験もある湊さん、「出たとこ勝負でいきましょう」と力強いお言葉です。校長先生に図書室に案内され、そこに集まっていた生徒たちとお話することになりました。湊さんが「将来何になりたいの?」と訊ねると「ドクター」(この返答が一番多かったです)「アーティスト」「まだ決まってない」といった中に、「アーミー(軍人)」という返答があったのが、違う文化圏だなあと感じました。
「ブラック・バトラー」が大好き、とわざわざ『黒執事』のコミックスを持ってきてくれた子も。「MANGA」は既に単語として定着しているようでした。

夜は初めてシャルージャ・ブックフェアの会場であるエキスポ・センターへ。実は昨夜、急にシャルージャTVより、湊さんにインタビュー生出演の依頼が入ったのです。午前中の学校訪問では出番のなかったKさんですが、アラビア語同時通訳としてようやくお仕事できることに。出番の前にはヘアメイクもつき、湊さんにアラブ風のくっきりしたメイクを施されました。湊さんは「日本の文学の特徴とは?」などと結構考え込んでしまうような質問にも「融合性がある、ということでしょうか」とさすが上手に返されていました。
シャルージャ国際ブックフェア

ホテルに戻るともう21時半を過ぎていましたが、ホテルのアラビア料理レストランで遅い夕食(Kさんが絶賛していたアラビアのデザートがあり、早速湊さんが注文!)。

11/6(火)
2校めの学校訪問。本日の通訳は女性のJさんなので、昨日のような事態は起きないだろうと思いつつ、ちょっと緊張して到着。MY OWN GIRL SCHOOL は全体で1万人を超す大規模な女子校で、ロビーには様々なトロフィーが並び、見るからに教育熱心な印象です。先生方のお話では、ブックフェアにも行きたいという声が多いが、希望者全員は行けないので、作家の学校訪問はとても嬉しいのだとか。教室には特に本を読むことと書くことが好きな生徒たちが集められていました。湊さんのスピーチの後、質疑応答が行われました。「作家という職業を選んだことについて」「作家として何かを伝えるために努力していることは」「翻訳されるとニュアンスが変わることについてどう思っているか」など、あてるのが間に合わないほど、次々に質問の手があがりました。最後に全員で記念撮影するとちょうど昼休みの時間に。校長先生のお部屋で、生徒たちと同じトルティーヤ風のサンドイッチと紅茶をご馳走になりました。
シャルージャ国際ブックフェア

午後からは、湊さんも楽しみにしていたデザート・サファリへ。ゲスト用プログラムにも予定されていたのですが、参加イベントと重なってしまい、がっかりしていたところ、急遽企画してくれることになりました。シュクラン・ジャズィーラ!豪快に砂煙を上げながらジェットコースターのように疾駆する車の中で「Oh!」「きゃー」と女4人(日本人2+カナダ人+オーストラリア人)で声を上げながらの砂漠ドライブです。キャメルファームでラクダを見学したり、ファルコン(鷹)のパフォーマンスを見ながら、キャンプに到着。板で砂漠の斜面を滑り降りるサンド・ボーディングや、手の甲に美しい文様を描いてもらうヘナ・タトゥーなどのアクティビティを体験するうちに、次第に日が暮れていきます。
シャルージャ国際ブックフェアシャルージャ国際ブックフェア

火を自在に操る迫力のファイアマン、鮮やかなスカートを履いた男性がぐるぐる回転しながら踊るタヌラ・ショー(なぜ目が回らないのか不思議……)、色っぽい女性のベリー・ダンスなどを観ながら、ビュッフェでアラビアンBBQディナーをいただきました。チキンがスパイシーで美味しかったです。すっかり暗くなった砂漠に浮かび上がるラクダたちを見送り、帰途に着きました。
シャルージャ国際ブックフェア

11/7(水)
いよいよUAE滞在も最終日。この日に予定されているブックフェアでのイベントは夜なので、それまで目いっぱいUAEを満喫したいという湊さん、地下鉄に初トライすることになりました。ホテルから車で30分かけて、地下鉄の始発駅であるラシディヤへ。1日乗車券(約700円)を買います。

地下鉄は綺麗で早くて快適!女性専用車両に乗ってみたところ、車両半ばにラインが引いてあり、そこを境に男女がきっちり別れて座っていました。

1時間ほどでイブン・バトゥータ・モールに到着。ここには「世界で一番美しいスタバ」があるのです。ホテルからかなり遠いのですが、地下鉄のおかげで来ることができました。たっぷりのラテを飲んだ後、また地下鉄でドバイ・モールへ。巨大水槽をしばし眺めます。
シャルージャ国際ブックフェアシャルージャ国際ブックフェア

またしても地下鉄に乗り、伝統的な建築の残るバスタキヤ地区へ。散歩してアラビアンティーハウスカフェでアラビアのお菓子の盛り合わせとバナナシェークで一休み。
シャルージャ国際ブックフェア

店舗の立ち並ぶオールド・スークを抜けて、渡し舟でドバイ・クリークを渡り(渡し賃は1AHD≒30円くらい)、スパイス・スークやゴールド・スークを早足で通り過ぎ、なかなか辿りつけなくて不安になりながらようやく地下鉄の駅を発見。終点のラシディヤからタクシーでホテルに戻ったら、出発時間まであと15分でした。本当にめいっぱい観て回りました。湊さん、タフ……! 
シャルージャ国際ブックフェア

イベントの時間までブックフェア会場を見学しました。会場のデザイナーは日本語のカタカナが気に入ったらしく、いたるところに「カ」「サ」のペイントやオブジェが。紀伊国屋ブースには湊さんの“Penance(贖罪)”をはじめ、今回ブックフェアに参加する作家の方たちのオリジナルの本と英訳本が並んでいました。“Connfessions(告白)”は既に売り切れていました。別のブースで可愛い豆本を見つけてお土産に購入。
シャルージャ国際ブックフェアシャルージャ国際ブックフェア

イベントのテーマは“Mysteries and Thrillers”。湊さんは中村文則さん、アラブの人気作家Abdul Wahhab Al-Rifa’i さんと一緒に登壇し、「影響を受けた作家」や「文学とミステリーというジャンルをどう意識しているか」といったテーマについて、それぞれの意見を語られました。中村さんと湊さんのトークイベントは、日本でもまず見られない豪華な組み合わせで、つくづくこの場にいられて良かったです!
シャルージャ国際ブックフェア

イベントが終わると熱心なファンからサインや記念撮影を求められました。売り切れていた“Connfessions”を持ってきてくれた方もいました。

最初に招待が来たときは、すごく遠い場所に思えましたが、濃密な4日間を通して本を読むことや書くことが大好きな人たちに会えて、とても近しい気持ちになりました。イラッ・リ・カー(また会いましょう)、シャルージャ。

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